初めて会った時がどんな風だったか、昔すぎて覚えていないけれど、会う前から天使のような小悪魔のような、人を魅了する何かを感じていた。
仲良くなりたいと思うのも烏滸がましいような雰囲気を、当時も、今も、感じている。人の好意をそのままの意味だけで受け取るような能天気さはなかったし、寧ろその奥の「しなきゃいけない」展開を予測してヒラリとかわしてしまうような警戒心があるように感じる。
何かひとつでも言葉を間違えてしまうと、一瞬でわたしを嫌いになるんだろうな。そう思わせるような、思い切りのいい、悪く言えば諦め早い、繊細な子なんだろうと思っている。
これはわたしが仲良くなりたいと過剰に思いすぎた結果の妄想かもしれないし、ある種当たってる部分もあるのかもしれない。
一緒にいても底がわからないから、他の人と違って未知で、憧れる。
仲良くなりたいから、共通の話題を増やしたいと努力したこともある。それでも全然わからなくて、自分が平凡で、ある意味恵まれた人間なんだと感じる。一緒になりたいのになれないのが悔しいと思う。
2人だけの秘密的な、時が経ったら忘れてしまうような悪事も、あなたは忘れてしまってもいいけど、わたしだけは覚えている。
普通は不謹慎な話題なのに、良かったねと一緒に笑ってくれたのが嬉しい。
昔からそうだよね、とわたしのことを話してくれたのも嬉しい。
わたしのためにわざわざプレゼントを考えてくれていたのも嬉しいし、久しぶりに会ったのにわたしの幸せを祝ってくれるのも嬉しい。
わたしのことを過去に置いていかないでくれたのが、本当に嬉しい。
他人から友達への境界線は非常に曖昧なのに、友達から他人への境界線は案外明確で、ひとはシビアに切ったり切られたりしている。
わたしはいつまであなたの中で生きていられるのだろう。多分いい大人になってしまったわたしたちは、いつのまにか疎遠になって他人になってしまうんだろう。いつかがいつなのかはわからないけれど。
多分わたしはあなたを一生境界線の外になんて出さないから、飽きたり、気が向いたら、いつでも昔みたいに会いたいな。
お互いに手を振った後、いつも真っ直ぐ前を向いて、決して後ろを振り向かないで歩く、後ろ姿を見るのが好きだ。あなたは振り向かないのに、わたしは後ろを眺め続けるチグハグさが好きだ。
今日もまた昔と同じように、小さくなっていく背中を眺めて、楽しかった時間を反芻する。
しゃんと伸びた背中が見えなくなる頃、やっとわたしは動き出す。