お姫様ではなかった

 

結婚は墓場だ、というような言説を聞いて、そもそも期待もしていないからそこまで絶望するものでもないと考えていた。

今思えば絶望したくないから期待していないふりをしていた。本当はお姫様扱いが良かったし、唯一の存在が良かった。嘘でも私の前ではそんな素振りでいてほしかった。

この言い振りからわかるように、そんなこと全くなかったのだけど。

 

好みの芸能人は?と訊いてイマイチ具体例を出さないから、可愛いの感性に乏しいと思っていた。そんな感性の中で唯一私が引っ掛かったのだと思っていた。不器用な愛情表現も、一般的な感性とズレているから上手く実行できないだけだと思っていた。

実際はそんなわけもなく、私にかわいい女の話をしないだけで、かわいいものはかわいいし、私は唯一ではなかった。

 

昔好きだった人が、わたしのことを弄んでいたのに、まるできちんと好意があるような素振りをしていた。多分他に同様の待遇をしていた女の子はたくさんいたんだろうと思う。特別カッコいい容姿ではないけど、一般的には評価されるようなスペックだった。

わたしは多分結構その人が好きで、優しい嘘を吐かれたのをあまり責められないでいた。だからこそ、他の女の子がいるなら正直に言って遊びだって言ってくれたらよかったのに、と思わないでもなかった。嘘で唯一だと言うから悲しんだのだと思う。

 

そんなことを思い出した。

 

彼は浮気したんでもないんだからというような言葉を吐くけれど、わたしにトラウマがあるからか、多分そういうことに過敏で、酷く絶望してしまった。お風呂に浸かって気持ちよくなっているときにいきなりひとに殴られるみたいな。決め打ちした後にそんなこと言うんだ、と思った。「そんなの後出しだ」と私が酷く怒ってどうしようもなくなっていることに関して、そちらもそのような嫉妬のような束縛を今更強いるのは後出しすぎるというようなことを言われた。わたしの本質的な陰湿な粘着部分を嫌っているようだった。そんな人間がわたしの文章を読んでわかったような気になっていたんだと思うと、自分の言葉の価値の無さを感じた。結局人間外側の綺麗に包装された部分しか見ていないのかもしれない。

自分が編み物をするみたいに綴っていたあれもこれも、みんな彼が嫌っているような感情で出来ているのに。

 

普通の感性を持っているなら、もっともっと私をお姫様扱いしてくれてもよかったのに、それをしないってことは、本当にわたしを好きじゃないんだね?

ぐちゃぐちゃした頭の中で凝固した考えが本当に破滅的で悲しかったけれど、わたしの悪い頭ではそうやって自分を納得させるしかなかった。

 

自分を1番好きでいるのは自分、余裕ができたくらいの気持ちで人を愛したい。自分のためにもひとのためにも。