花束を包む

 

映画「花束みたいな恋をした」を観に行った感想なので、これから観にいく予定の人、ネタバレを好ましく思わない人は読むのをお勧めしません。

 

友人に誘われて観に行った作品でしたが、思っていた以上に良かったです。何が良かったかというと恋愛の汚い部分をしっかり描いていること。

男女の出会い方は異常に御都合主義的で「そんなに一致することないでしょ!」とツッコミを入れたくなるようなものなのですが、付き合ってから彼氏宅に入り浸って堕落してフリーターになって…という流れはわたしと似た部分があるので刺さりました。お風呂に浸かってるみたいに快適だけど、少しずつ湯の温度が冷めてこのままじゃ風邪をひいちゃうな、と危惧されるような。崩壊を孕みつつ接着剤でなんとか誤魔化しているような。

やはり現実はそう甘くはないので、夢とか楽しいことだけ、なんて言っていられなくてなんとか職に就くのです。自分が思い描いていたような職ではないけれど生活をするために必要な仕事。1人は自分の中の芯はブラさずに今の職を踏み台程度に思って、1人は忙殺されて夢のことなんか失くしてしまって仕事人間に。私はまだ体感したことはないけれど、会社員と学生で溝ができてしまうのはこういうことなのだろうな、と考えたりした。

好きな小説とか漫画とか、音楽とか、映画とか、忙しさで少しずつ娯楽すら摂取できなくなってしまう姿は、本人は気付いていないけれど疲弊しているようでした。

少しずつ2人の間での会話がなくなり「わたしはこう思った」というような意見交換すらもできなくなって、言葉にした「結婚」も過去のものになって、2人ともなんとなく別れようという気持ちになってしまうのです。

仕事に忙殺され「俺は忙しい」の一言で心を閉ざして、なのに相手にばかり要求する男には滅茶苦茶ムカつきました。(菅田将暉は好きだけど、本当こういう男いるよな!?って気持ちになりました。菅田将暉でも許せん)

 

最後はお互い笑顔で別れるのだけど、一度割れた食器が元通りになることはないように、やっぱり永遠の別れなのでしょう。お互い街で顔を合わせても声を掛けることはない。

 

私も今長く続いている恋人がいるので、今は円満でも将来こんなことになるんじゃないかと考えたりしました。好きな部分がどれだけいっぱいあっても、それだけで未来を重ねることはできないんだろうな。

好きな人が好きだったもの、好きな人と一緒に行ったところ、好きな人と一緒に食べたもの、全てがその人を思い出させて、戻れもしない時間を懐かしく思うのだろうな。