疲弊

目覚めるともうこんな時間だった、なんてことはもうよくあることになってしまって、それが悲しくて快く起きられない。早く起きて1日を充実させようなんて叶わない願いになりつつある。

中学生や高校生の頃は朝日が登る前に起きて支度して学校へ向かっていたはずなのに、今はそんな当たり前が当たり前じゃなくなっている。朝起きても朝食を作る匂いはしないし、テレビの音も聞こえない。遮光カーテンの向こう側は乱立するアパートが見えるだけだった。

 

それでも子供じゃないので起きて、顔を洗って、歯磨きをした。いつから朝ごはんを食べなくなったのだろうと考えたけれど、一人暮らしをしてすぐだった気がする。今や冷蔵庫に食材さえまともにない気がする。あるとしても缶ビールとかドレッシングとか、そんなもんだと思う。

ふと鏡を見るとシワが増えてクマが濃く刻まれた女の顔が映った。時が経つのは恐ろしいと思いながら、目をそらす。昔から歯を磨くのが苦手で、歯磨き粉と自分の唾液で口がいっぱいになったらもう濯ぎたくなってしまう。今回もそんな感じで手短に歯磨きを終えた。流しにペッと口の中のものを出すのは酒を飲みすぎた時のことを思い出すので、嗚咽交じりになってしまう。

 

適当な布の組み合わせを選んで身につけて、髪を後ろにくくって、顔を整えた。昔よりも工程が多くなって、いい加減面倒くさいと思うようになってしまった。日焼け止めを塗って、下地を塗って、ファンデーションを塗って、コンシーラーを塗って、ハイライトを仕込んで、パウダーをはたいて、何故女ばかり化粧をせねばならないのだろうかとため息をついてしまう。

質素な目に申し訳程度に色をつけようとアイシャドウパレットを開くと、やっと底見えしてきたベース部分の色が割れて粉々になってしまっていた。「社会人になるから!」といって奮発してデパートで買ったものだったのに、呆気ないものだなあ。それでもまあ使えるだろうと粉々になった塊を中指に押し付けて色を射した。新しいものを買うのもバカバカしいので当分はこうして耐えられるなあと思った。

 

物干しにかけてあるストッキングを手にとって履こうとすると、自分の乾燥した指で伝染してしまう。ストッキングって直ぐにダメになるのに高いから困ってしまう。私の手が乾燥してるからダメなのかしら。

ちょっと朝から心が弱くなってしまう。

 

LINEを開くと昔の友人からメッセージがあった。

週末暇なら久し振りにご飯をしないか、という簡素な内容だったのだけど、なんだか凄く泣けてしまった。