結膜炎

起きて、昨日入れなかったお風呂に入って、暖かくなった身体を朝の冷えた空気で冷まして、化粧水をバシャバシャと顔に入れて、今日もあまり肌の調子は良くないななんて鏡と見つめ合う。

 

今朝はお風呂に入ったから時間がなかった。

飲みかけのコーヒー牛乳を冷蔵庫から取り出して、飲みながら自分の顔を装飾していく。今日もわたしじゃない私を形成する。

化粧をしなくても家を出られる人間はすごいと思う。化粧をしなくても自分を持てるなんて、羨ましい。わたしの状態を人目に晒すのは怖い。そんな際立って整った容姿ではないし。

眉毛が伸びてきて上手く描けなくて悲しくなった。

 

髪の毛を乾かして、ヘアアイロンをかける。

前髪は短い方がいい。長いのは似合わないし、うざったくなってしまう。俯いても顔が隠れないようにしないと、見せられる私にはなれない。

 

最近、というか軽く1ヶ月前から結膜炎だ。今日も炎症を抑える薬をさす。

耳が遠くなるのは怖くないけれど、色が見分けられなくなったり形が捉えられなくなるのはものすごく怖い。文字が打てなくなったり、文字が読めなくなったりするのも怖い。

本当は眼鏡やコンタクトで視力を無理矢理あげているのも怖い。

眼科に行くたび下がっていく視力が怖い。

 

お父さんが家を先に出たから、ご飯が食べられなくても良いや。お父さんは朝ご飯を抜くと怒る。化粧はするのに朝ご飯は抜くのか?と言うか。

でも朝ご飯より化粧の方が大事。

男と違って女は容姿をよくよく見られる。女を生きたこともないくせに化粧という魔法を馬鹿にしないでほしい。お前にとってはわずかな違いなのかもしれないけれど、私にとっては命取り。

病気だと言われたら病気だよと答える。

 

お母さんが些細なことを私に話してくるのだけど、朝は視力も聴力も、声を出す力も衰えているから冷たくしてしまう。

全部後で申し訳なく思う。

 

室蘭にいる弟が使っていた自転車で駅まで向かう。錆びているのか何か歯車が噛み合っていないような音がする。私みたいだね。

 

駅に着くと、殆どの人が札幌方面行きのホームに向かって進んでいく。私はその流れに逆らって岩見沢方面行きのホームへ向かう。

ホームに立つと、こちらは人が居ないのに、あちらは溢れるほどだ。多分あちらの方が正しくて一般的で普通なのだと思う。

私もあちらに立てる人間だったらどんなに良かっただろうか。こちらのホームとあちらのホームの間には線路があって、とてもじゃないけど簡単にそちらに行くことなんて出来なさそうだ。

こちら側の線路を快速電車が通過する。

飛び込む勇気なんて無かった。

私はいつまでこちらで少数派を気取っているのだろう。